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よみものどっとこむ

第22回

61話~62話

2016.08.22更新

読了時間

61 権力者にこびて、余計なことを言うのは危険である


【現代語訳】

魯(ろ)の哀(あい)公(こう)が弟子の宰(さい)我(が)(※)に社(やしろ)(※)の神木(しんぼく)についてたずねた。宰我は答えた。「夏(か)の時代は松を使い、殷(いん)の時代は柏(ひのき)を使い、周の時代には栗(くり)を植えました。周が栗(くり)を植えたのは、言うことを聞かないものに対して戦栗(せんりつ)(※)させるぞという意味が込められているのです」。

これを聞いた孔子先生は言われた。「できてしまったことを言ってもしかたない。済んだことを責めてもしかたない。過ぎてしまったことを嘆いてもしかたない。これからは、哀公にこびてつまらぬことを言わないようにしなさい」。


(※)宰我……孔子の門人で雄弁家であるが、お調子者で軽いところがある。生年月日はわかっていない。

(※)社……天子諸侯が土地の神を祭るところ。一定の木を植えて神体としたもの。

(※)戦栗……「栗」は「慄」の意で、音から「戦慄」に通じるが、周の社に栗を植えたのは、別に民を戦慄させることを考えたものではなかったはずだ。それを宰我がつい口をすべらせてしまったのを孔子がたしなめた。


【読み下し文】

哀公(あいこう)、社(しゃ)を宰(さい)我(が)に問(と)う。宰(さい)我(が)、対(こた)えて曰(いわ)く、夏(か)后(こう)氏(し)は松(まつ)を以(もっ)てし、殷人(いんひと)は柏(まつ)を以(もっ)てし、周人(しゅうひと)は栗(りつ)を以(もっ)てす。民(たみ)をして戦(せん)栗(りつ)せしむるを日(い)うなり。子(し)これを聞(き)きて曰(いわ)く、成事(せいじ)は説(と)かず、遂事(すいじ)は諌(せ)めず、既往(きおう)は咎(とが)めず。


【原文】

哀公問社於宰我、宰我對曰、夏后氏以松、殷人以栢、周人以栗、曰、使民戰栗也、子聞之曰、成事不説、遂事不諫、既往不咎、


62 偉人であっても器が大きいとは限らない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「菅(かん)仲(ちゅう)(※)は器(うつわ)が小さいところがあった」。それを聞いたある人がたずねた。「倹約しすぎたということですか」。

孔子先生は言われた。「いや、菅仲には三つの家があって、使用人もそれぞれにいた。どうして倹約家と言えよう」。「では、菅仲は礼にこだわりすぎたということでしょうか」。

孔子先生は言われた。「いや、諸侯は門の内側に塀を立てるが、菅仲も大夫(貴族)の地位でありながらも塀を立てている。また、諸侯が諸国と友好のための宴を催す時に反坫(はんてん)という盃を置く台を用いるが、菅仲も平気でそれを用いている。そんな菅仲が礼を知るなどというなら、世の中に礼を知らない者などいまい」。


(※)菅仲……中国歴史上の偉人の一人。孔子より百七、八十年前の人。斉の官公を助けて中華の覇者にした名宰相。「倉稟満ちて礼節を知り、中華の衣食足りて栄辱を知る」の言葉が有名。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、菅(かん)仲(ちゅう)の器(き)は小(しょう)なるかな。或(あ)る人(ひと)曰(いわ)く、菅(かん)仲(ちゅう)は倹(けん)なるか。曰(いわ)く、菅(かん)氏(し)に三帰(さんき)(※)あり、官事(かんじ)は攝(か)せず、焉(いずく)んぞ倹(けん)なるを得(え)ん。然(しか)らば則(すなわ)ち菅(かん)仲(ちゅう)は礼(れい)を知(し)るか。曰(いわ)く、邦(ほう)君(くん)は樹(じゅ)して門(もん)を塞(ふさ)ぐ。菅(かん)氏(し)も亦(ま)た門(もん)を塞(ふさ)ぐ。邦(ほう)君(くん)が両(りょう)君(くん)の好(この)みを為(な)すには反坫(はんてん)あり、菅(かん)氏(し)も亦(ま)た反坫(はんてん)あり。菅(かん)氏(し)にして礼(れい)を知(し)らば、孰(たれ)か礼(れい)を知(し)らざらん。


(※)三帰……帰はより所。三ヵ所の邸宅の意味。


【原文】

子曰、管仲之器小哉、或曰、管仲儉乎、曰、管氏有三歸、官事不攝、焉得儉乎、曰然則管仲知禮乎、曰、邦君樹塞門、管氏亦樹塞門、邦君爲兩君之好、有反坫、管氏亦有反坫、管氏而知禮、孰不知禮、



*61話、62話は長文のため、今回は2話のみの掲載となります。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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